電触にご注意

電触とは2つの異なる材質の金属を接したした状態で、ここに海水など、電気を流しやすい液体や湿気を

含むと、その部分が電池となり、一方の金属から他方の金属に向かって電流が流れ、金属を激しく腐食させる作用の事を言います。

それが投げ釣りにどう関わるのか?と不思議に思われる方もおられるかも知れませんが、

上の概念図のような状態は、特に金属で出来たリールやスプールで起こります。

以前にアルミスプールの腐食を他のコンテンツで取り上げましたが、あの腐食しやすいテクニウムのスプールの場合は

アルミのスプール本体とチタンコーテイングをしたステンレス製のエッジの材質が違う為であり、ここに海水を含んだ道糸を巻くと

腐食電流が流れ、まるで虫が食ったように腐食が進む訳です。 仮に、スプール全体がアルミのみならば、

このような電触を発生する電流は殆ど流れません。この事はスプール全体がアルミのみのパワーエアロや

スプールエッジに電気を通しにくいジルコニアを使っているチタニウムでは発生しにくい事でも理解出来ます。

しかし、スプール軸に鋼を使用していますので、やはりパワーエアロやチタニウムでも

スプール軸からスプールに向かって電流が流れ、発生頻度は少ないものの、電触が発生します。

このように、異なる種類の金属どうしが接するような設計のスプールやスプールエッジ、スプール軸や

スプールノブを使った場合は電触から避けられません。

テクニウムの場合は軸もスプール本体もエッジも全て材質が異なるので電触が激しく、

私も発表後すぐに購入した経緯がありますが、スペアで購入したスプールまで全て腐食させた苦い経験があります。

その頃は絶縁体である樹脂スプールは殆ど出回っておらず、防錆オイル等を塗布し、

毎回使用後に塩分を洗い流しても腐食するので不思議でなりませんでしたが、

漁船の電触で苦労されているボートショプの方に話しを聞き、理解する事が出来ました。

これも以前にコンテンツで書いた「シールコート」と言う絶縁樹脂層を作るスプレーで有る程度は防止出来は

しましたが、その樹脂層に少しでもキズが入るとそこから腐食が始まります。

そこで、根本的な解決法は樹脂製スプールを使う事ですが、何故か高級リールに金属スプールを使いたがる

リールメーカーもようやくその事に気付いたのか、

シマノのテクニウムMgでは、スプールはエッジまでアルミの一体整形とし、異種の金属の使用を止め、

スプール軸やスプールノブもアルミ製として同一金属とする事により徹底して電触を防いでいます。

従って強度を稼ぐ為、アルミ製のスプール軸は従来の鋼製スプール軸を使用したリールよりも、

かなり太くなってしまいましたが・・(~_~;)

従ってテクニウムMgでは電触は構造的に発生しにくくなっています。

次に、電触が問題になるのが、リールのベールアームやベールアームのベアリングです。

チタニウム、テクニウム等、多くのリールではベールアームを支える部分は樹脂が使われています。

ここに何故強度や美しさで勝る金属を使用しないのかは、電触の発生原理から理解出来ますね・・・。

問題はベールアームのローラーベアリングで、本来ここはベアリングにローラーのみで機能的には良いのですが、

このままではベアリングとローラーとの間で電触が進んで、鋼製や例えステンレスのベアリングでも容易に

腐食してしまします。(以前の電触を考慮していないリールではベアリングが真っ赤に錆びて困ったものでした・・(-_-;)

最近のリールを分解すると、例え錆に強いA-RBベアリングを使用したリールでも、ベアリングはローラーや

ローラーが収まっているハウジングから電気的に絶縁するように樹脂のワッシャーや軸にチュープを入れたり、

軸そのものをセラミック製にして絶縁してあります。 それでも、この部分は常に道糸が接触して海水や湿気が溜まりやすく

例えベアリングが絶縁してあっても、水分が浸入すると、絶縁度が低下し、電触電流が流れてしまいます。

よって私はA-RBを使用したリールでも、「水分を含ませない」意味で防錆オイルを前もって注入しておく事で

水分の浸入を防いでいます。

その他、リールには異なる種類の金属が接する場所が多々あります。滅多に海水が浸入しないリール内部は

問題ありませんが、ハンドルツマミの軸に収まったベアリング部分やリールの各所に使われているネジは全て鋼かステンレス製で、

ボディーはアルミかマグネシウムで、異種金属が接しています。 そのような部分にも金属表面を電流が流れにくいように

防錆オイルを塗布したり、樹脂コーテイングが有効で、使い終わったら水洗いだけ・・・では

リールに余計な湿気を与えて電触が激しく進む要因を作ってしまう事になります。

したがって、私は使い終わったリールは洗わず、直接オイルを吹き付け、汚れをオイルと共に軽く拭き取り、

ローラーやつまみ部分には必ず防錆オイルの6−66等を注入しています。

有名で入手しやすい5−56でもかまいませんが、マリン用途の6−66のほうが塗膜が切れにくく、電触には特効があります。